なぜ、今か

最初の目的は、なぜ、いま、デザインか。その動機と魅力を探ることでした。ここまで述べてきたテキストの中で、大方の見当はついたかもしれません。


私は、かたちを作りたい。かたちを作り、それを残したい。
それは欲求であると同時に、私が人間と関わるひとつのやり方でもあります。
そしてもう一つ大きなことを言えば、人間の生活の可能性、人間の感性の可能性を、新しいかたちによって開きたいという、目標でもあります。


デザインすることは、ただかたちを作るだけではないのだと、私は思います。むしろ、かたちという、目の前のものを通して、それを手にする人々の生き方に関わるということではないか。私の作るものが、なんらかの形で誰かの手にとられ、その人の毎日をちょっとだけ変化させることができたら。私の考えるデザインの魅力、デザインの力は、そういうところにあるのではないかと思います。


では、それを今、生業にすることにはどんな意義があるでしょうか。今という時間を切り取るにはなぜか時代を語らなくてはならないのですが、あえて言えば、今は新しいものが求められていると感じます。しかも、その新しさがペーパータオルのように使い捨てられずに、私たちの生活に留まり、普及するような新しさであるのではないか(その意味ではペーパータオルはある時期にぴったりなデザインだったのかもしれません)。


デザインは常に先を読みます。というよりも、常に先を作り出し、現実のかたちとして取りだして見せるものです。そういう未来の時間が、私は今必要なのではないかと感じています。デザインは、未来を現実にたぐり寄せることが可能な、ひとつの行為です。今、デザインをすることに意義を見いだすとすれば、その点にあるように思います。