喪服の黒

少し前、喪服を調達せねばならない状況があったのですが、そのときに、同じ黒でも実にさまざまな色があるということに気がつかされました。
喪服には主に、化繊を使ったものと、ウールを使ったものがあり、まずこの素材の違いが色に影響を与えます。ウールの黒は高級感のある、しっとりとした深みのある黒、化繊の黒は印象が柔らかく、優しい風合いを与える黒。また同じウールでも生地の仕立てによって全然違いますし、化繊は化繊で、また同じ色を探すのは本当に難しい。
実は上着のない黒のワンピースに、上着をあつらえようという魂胆だったのですが、このたくらみはまんまと頓挫しました。手持ちのワンピースと同じ黒色が、探しても探しても見つからなかったのです。
フォーマルウェアのフロア担当の方とお話しした限りでは、ブラックフォーマルはとりわけ黒を「濃く」作るのだそうです。だから、通常売られているブラックスーツよりも、フォーマルとして売られているブラックスーツは更に色が濃いのだと。曰く、
「黒はねぇ、色を合わせるのは難しいですよ」
まったく、その通りでした。
シンプルであればあるほど、微細な差異が際立つのかもしれません。ひとことで黒、といえども実際には多様な黒がある。このことは、心に留めておきたいと思います。