新しいものをつくる

寄り道から戻って、ふたたびデザインの魅力について考えてみます。今日は、新しいものをつくる、ことについて。


新しいというと、まっさらな何もない状態から生まれてくる様子が思い浮かびます。
白いボードの上に描かれていく黒い線。
粘度の塊から生まれるかたち。
今も次々に生まれてくるこどもたち。
新しいという言葉は、そんなゼロからの始まりを連想させます。


でも、本当のところ、そんな風に新しいものが、どれくらいあるでしょうか。
私は、自由について書いたとき、それは枠組みに気づく作業とセットになっていると言いました。実は、ここでも同じようなことを考えています。


つまり、新しいものにも、何らかの出発点がある、ということです。新しいものだって、何もないところから始まるわけではありません。常に、今あるものを踏み台にして出発するのです。


このことは、私たちの知性や感性が現在あるものに捕らわれ続けるということではありません。
新しいものを作ることと、これまであったものを引き継ぐことの間には、違いがあります。これまでになかったものが生まれるという点です。
そしてこれまでになかったものは、人間の可能性を広げてくれるものだと、私は考えています。道具の発明は、常に私たちが思いもよらなかったところへ、私たちを導いてくれました。新しいものには、そんな力があります。


何かを作ることは、常に新しい。その新しさが、私たちの生活や感性までを変えてしまう。私にとって、デザインの魅力はそんなところにもあるのです。